般若は日本の伝統的なデザインのうちの一つです。古くから現代まで、とても人気なデザインで、タトゥーのみならず一度はどこかで見かけたこともあるでしょう。
仏教において、「般若」は過酷な苦行を乗り越え、心身ともにある一定の境地に辿り着いたものが得られる智慧(悟り)のことを指し、本来はとても素晴らしいものを表す言葉です。
一方で般若には、また別の意味も含まれており、その見た目の通り、恐ろしい形相の鬼の面、これを「般若の面」と言い、省略されて般若と呼ばれています。タトゥーにおいては、悟りではなく、この般若の面の象徴として描かれていることが多いです。
恐ろしい形相をした顔に角が生え、鋭い牙が上下の口元に描かるのが特徴で、男性の顔のように見えますが、実は、嫉妬や恨みの念に憤慨している女性が鬼になった顔が元になっています。裏切られ、嫉妬に狂った女性はこの後、蛇へと姿を変えたと言われています。心の痛みが怨念に変わったとき、女性は自分を見失い、般若へと変身すると言われています。
般若と鬼の違いは、鬼の面が男性の鬼を表すのに対し、般若の面は日本の物語における女性の鬼として描かれています。極悪人として地獄の番人となってしまった鬼。それに対して、般若は憤慨している女性を表していることから、タトゥーにおいても様々なカラーによって表現されることが多々あり、色合いによっても意味が異なります。例えば、白い般若は貴族の身分を表し、赤は下層階級の人や悪を表し、黒や非常に暗い色合いは鬼と化したことを意味します。
般若には諸説ありますが、源氏物語に登場する浮気をされて怒り狂った女性がモチーフになったと言われています。源氏の時代から現代まで、長きにわたって伝統スタイルの人気デザインとなっている般若。